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正常な社会の感覚(『地球星人』を読んで。)

図書館で借りていた本の返却期限が差し迫っていたこともあり、昨晩は積ん読解消に勤しみました。村田沙耶香氏の『地球星人』という作品で、著者は芥川賞受賞作品の『コンビニ人間』の作者でもあります。

読了後はお世辞にも気分が良いとは言えない、むしろ気分が悪くなりました。
コンビニ人間を読んだときも感じたことですが、村田氏は周りを取り囲む「普通の人間」に対して疎外感を持ち、「普通」になろうとする人を描くのがとても巧みだと思います。
「普通」に近づこうとするほど馴染めずに浮いてしまう主人公の息苦しさと、その彼女に対し「異常だ」と言葉を投げつける周囲の人々が残忍に映ります。
世間の生活形態を「工場」といい、人々は洗脳されていると断定する彼女の発露は強烈です。
彼女をアスペルガーだとか診断し、病気で異常だと診断(断定)することは容易ですが、それを理由に排除するということがいとも簡単に行われると恐ろしいものです。
読者である自分は、自分は地球星人ではなく宇宙人であるという彼女の様子を見て、間違いなく彼女を「異常だ」と断定しているに違いありません。
その視点に気づくと、とても気分が悪くなります。
自分自身は勝手に「普通の側」であるといって、彼女を断罪する立場にいるということに。
最後に彼女は宇宙人として生きることを決めます。「人間らしさ」は次第に失われても、彼女は満足そうにしているのでした。

「宇宙人は私たちのほうかもしれない。この地球に住み着いて、自らを洗脳させてきたのかもしれない。」
恐ろしい発想ですが、なるほどと思います。
常識の反対は異常ではなく、別の形態の常識だろうということを感じます。

まだまだ書かなければならないことがありそうですが、長くなりそうなのでこの辺で終わります。
本との出会いは、いつも衝撃にあふれています。

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