沈丁花
JR京都線長岡京駅を利用して、我が家の方面に帰る最終バスは、平日午後10時半に出ます。夜も9時を過ぎると、40分間隔の待ち合わせになるので、少しタイミングがずれるとそこで待ちぼうけ。最近はまだまだ寒かったり、雨が降ったり。立ちながら街灯の灯りで、本を読むのも少しつらいときも。そんなとき風に乗って、どこからともなく何とも言えない香りが。。
沈丁花です。長岡京駅のバス停前に、大きな球のように丸く刈り揃えられた沈丁花が、夜の闇の中、満開の花をつけていました。その無数の薄桃色の花々から、甘い香りが奔放に中空に放出されているのです。その香りを嗅覚が捉えた刹那、私の中の野生が春を捉えました。目の前のコートに背を丸めた人にも、夜のロータリーにも、もう春が来ているのだと。
花の香り、雨の匂い、雪の音、蝉の声。忙しい毎日、激変する経済環境、難しい人間関係。ともすれば「忙しさ」の中で、我知らず「心」を「亡」ぼしてしまいそうになる自分を、自然はその大きな力で包み込みながら、くい止めてくれているのかもしれません。耳を澄ませてみる。目を上げてみる。香りに包まれてみる。焦らずバスを待とう。沈丁花が風に揺れています。
