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翻訳本の楽しみ

昨日「石川サテライト文庫」で紹介した中の一冊、「クララとお日さま」。私この小説、すごく気に入ったので、原書も読んでみたのですが、こちらも当然ですが素晴らしい。そして先日偶然、翻訳者の土屋政雄氏本人が、同著の翻訳の裏話などを語るオンライン読書会を見つけたので、参加してみました。こういうことがサッとできるのは、オンラインものの良さですね。約30人の方の質疑応答に、土屋氏本人が生で応答されました。

その中で興味深く聴いたのが、この小説の翻訳ポイント。カズオ・イシグロ氏は今やノーベル文学賞受賞の、世界の超売れっ子作家。なので新作は、当然各国で翻訳出版されることが予定されている。これまでの実績や実力を考慮され、その国の翻訳者が決まる。その後イシグロ氏の事務所から、原版と共に「翻訳の注意点」が通達されたそうです。つまり世界共通で、こういう点に気をつけて翻訳してほしいというお願い点です。

1つ目は、「クララ語」を的確に訳してほしいということ。クララはAIなので、視覚的に入って来た情報を、言語に処理して理解する。たとえば原文には「rectangle(長方形)」と書いてあって、これが近未来のスマホ?を表現している。他には、日本語訳で「シャーピペンシル」と書いてあって、違和感がある人もいたと思うのですが、原文はsharppencil。シャーペンは和製英語で、逆にここでは別のペンとして登場し、訳し方が問われる。

2つ目は、近未来に流通しているであろう言葉を訳すこと。その代表が「lifted」。本では「向上処置を受けた」と訳されていました。3つ目は、クララの全般の言葉遣い。馴れ馴れしくなく、ウエイトレスみたいな感じ。メラニアさんの言葉との比較も面白い。これらの注文が全世界の翻訳者に行くものの、その結果は事務局にはわからないので、日本なら土屋氏任せ。氏は一回通読して、すぐに翻訳に入るそうです。翻訳が最大の精読だと。果たしてクララ(AI)に感情はあるのか?土屋氏の考えは?そんなことを訳語から読み取るのも一興です。

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