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隣の人も、きっと誰かのことを想っている。(小説『木曜日にはココアを』より)

とある喫茶店「マーブル・カフェ」で店長を任されたとある青年は、いつも決まった窓際の席で、決まってココアを注文する女性に思いを寄せている。
彼女は英文で書かれた一通の手紙を読んでいて、それは英文で書かれていて、遠くにいる大切な人と繋がっているのだろう。
別の席では料理本を広げながら、子供の授業参観日に初めてお弁当をつくることになったらしく、頭を抱えている人がいる。
また別の席では久しぶりに旧友と再会し、その内の一人が結婚することになったことを語り合っている。

それぞれの人が、それぞれの生き方で、それでもどこかで響き合っている。

ココア、手紙、ネイル、ハーブ、サンドウィッチ…などといった事柄と人物が重なり合いう。
オムニバス形式で、それぞれの人物の話がどこかで繋がっている構成になっている。
東京のとあるカフェから、オーストラリアのシドニーまで、遠く密接につながっていく。
前の話との繋がりにバトンリレーのような構成で、どの話も胸が温かくなるような話ばかり。
旧友との約束、仕事と人生、恋と目標…テーマは様々だが、不思議と一つにまとまっている。
(個人的には、魔女になりたくてハーブの調合を学びに行くシドニーの少女の話が一番好きである。)

作中にたくさん描写されているわけでは無いが、誰かと誰かを繋げる役を果たしている「マスター」の存在がかなり大きい。
バトンとバトンが繋がる間には、きっと誰かがいるのだろう。
人が幸せを見つけられるのも、そういった誰かの手が泣ければ、難しいのだと思う。
誰かの良いところは、本人ではなくて、別の誰かがよく知っているのかもしれない。

寝る前に温かいココアを飲むように、落ち着きたいときにおすすめできる一冊。

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