社員ブログ

ある男「D」

 ある男がいる。仮に「D」としておこう。
32歳で某商社の滋賀営業所に勤務している。
彼にはある「ジンクス」がある。その「ジンクス」とは、電車に乗る際に、
隣に座ってくる乗客は、「化粧プンプンおばさん」か「イビキがーがーおじさん」である可能性が高いと言うことである。早い話、隣に座る乗客に恵まれないということだ。
 彼は通常では車での仕事が多いようだが、この日は、ある資格試験の受験の為に電車に乗った。
「嫌な予感がする」 「D」は思った。
 
 草津駅から新快速に乗り、大阪方面へ向かったのだが、京都駅でやっと座席に座ることが出来た。
窓際の席を確保して、隣はまだ空席である。
「あ~。また嫌な客が隣に座るんだろうなぁ」 「D」は憂鬱だった。
窓の外の天気は晴れているが、「D」の気分は曇っていた。
 しかし日頃の疲れが溜まっているせいか、「D」は少し眠ってしまった様だ。ふと気がつくと高槻駅で乗客を乗せて、もう電車は走り出していた。しかも隣の座席には誰かが座っている。「D」はその隣の乗客を見るのが怖いので、窓の外を眺めることにした。
 そのとき「D」は気がついたのだが、なんと窓越しに映る隣の乗客が絶世の美人なのだ。
「お~。こんなこともあるのだな。」 
「D」は一気に目も覚めて、ちょっとドキドキしている。
チラッと隣を見ると、手足が長く、鼻筋の通った俗に言う「美人タイプ」のようだ。
 そしてどうやら本を読んでいて、時折「くすっ」と微笑んでいるようだ。
「美人というものは、笑い声も綺麗なのだな」  
「D」は思った。
 そのとき隣の美人が急に、どすの利いた低い声で大笑いした。
「ぐはっ。ぐはっ。ぐははははっ~!!!」
「D」はそのとき初めて隣の美人の顔をはっきりと見た。
 彼の「ジンクス」に「ニューハーフ」が追加されたことは言うまでもない。
 

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