クールビズのクールは涼しいって意味だよ。
いつも通りにスーツを着て出社すると、会社に着くころには少し汗ばんでいることに気が付いた。羽織ったジャケットの背中が熱くて鬱陶しく、首周りのネクタイがまさに自分の首を絞めているような気分になった。
もう夏が近づいている。いや、その前に梅雨が来るだろう。今日は晴れで、明日は雨が降るらしい。先週までは冷えるような雨だったのに、これから蒸すような雨になっていく。
この先、しばらくはジメジメとした天気になっていくのかと思うと、少しばかり憂鬱だ。
5月に入って、会社のほうでもクールビズ期間が始まっていた。社員の多くの方がネクタイを取っているようで、まるでそれがあたかも昔からそうだという様子だった。
だから、新入社員の自分たちだけスーツをしっかり着ているという状況が、俄かに滑稽に思えてきたのだった。
そんな様子を見かねてか、自分たちもクールビズで良いとのこと。そういわれて、ネクタイを外し、ジャケットも脱いでおいた。
確かに涼しくはなったけど、なんだか物足りない気分になった。
ジャケットを羽織っていない自分の姿を見慣れていないだけだろうか。
ジャケットを着ていると強くなった気がするからだろうか。
ジャケットがない自分は、幾分か頼りなく見える。
いや、いつも頼りないだろう。
スーツの威を借りるくらいなら着実に成長しろよ、ということだろうか。
湿ったぬるい空気が自分のガードを剥がしたに違いない。
次の秋、肌寒くなるころまで、ジャケットに着られているんじゃなくて、自分が着てやるって、そうなれるように大きくなりたい。
それまで暫しジャケットよ、さらばだ。
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