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「休日何してますか?」が地雷になるとき。

ブレイディみかこ氏の『僕はイエローでホワイトで、ちょっとブルー』という著作を読んだ。著者は日本人女性でイギリス人の夫がおり、息子が一人いる。
英国のブライトン在住しており、そこでの様々な出来事を題材に考えられたエッセイ集が本著作である。
読めば、ひとくくりに多様性とは何たるものかを言うのは難しいと感じさせられる。
イギリスに住まうヨーロッパ各地やアジア、アフリカの人々たちの諸事情と、現地の格差の問題、それが人々の意識に強く作用しているということ。
現場の衝突と調整の困難さは具体的にどれくらいあるのか、そのリアル感が伝わるような著作だと思う。

一番印象に残ったのは著作中の『地雷だらけの多様性ワールド』という章だった。
著者が学校用品を売るバザーでアフリカ人女性と会話する場面で、「どこかホリデイに出かけるんですか?(休日は何されるんですか?)」と社交辞令的に尋ねたところ、その女性に「アフリカには戻らないから安心しな。」と睨まれてしまう。
その背景に、学校でFGM(割礼問題)が講演されていて、長期休みに入るとアフリカ出身の少女たちが現地に戻るときに割礼を受けさせられてしまう事例があるということが伝えられていたためだったのだろう。
著者の問いかけにアフリカ人女性が睨んだのは、子供たちを割礼させに戻るんじゃないかという意図があったと思ったゆえだったのだろう。
しかし、著者はただただ社交辞令的に言ったにすぎなかった。

そのような地雷原がこの世にはいくつもある。そう思うと何が無難で問題にならない発言なのか分からなくなってくる。
発言には気を付けないければならないというが、どれをどう気を付けるか、それが判別しがたい世界に生きている。
だから、これから先は個別問題で、意図の誤解を解くことが最重要課題になてくるのかもしれない。
著者には、その女性がすぐさま立ち去ってしまったために弁解する余地が無かった。そのあとのため息が出るような心中を想像すると、いたたまれない。

しかしそれでも大事なことは、著者の息子も言っている通り「自分で誰かの靴を履いてみること (Put oneself in someone’s shoes.)」であろう。
誰かに傷つけられる痛みも、誰かを傷つけるという後悔も含めて、生きていくしかないのだと思う。

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