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生まれ変わりのお話は昔から。

『月の満ち欠け』(佐藤正午著)という本が岩波文庫から出ていた。
岩波というと、古典文学や学術書の翻訳物などのラインナップが豊富で、どことなくお堅い出版社なイメージが自分の中にあった。だから、この作品も大正時代辺りの文学かと思いきや、なんてことはなく現代の小説作品であった(2017年初版)。
意外中の意外である。

読んでみると、生まれ変わりがテーマの作品で、何度生まれ変わっても同じ男の人を目指して愛し続ける女性の不思議な話だった。伊坂幸太郎の作品が好きな人なら、こちらの作品も好きかもしれない。(登場人物の行動が連鎖的につながり、物語が大きく動いていくようなもの。『アヒルと鴨のコインロッカー』や『フィッシュストーリー』等、こちらもとても面白い。)

生まれ変わりのお話というと、なんとなく日本の古典、平安期や鎌倉などのあの時代の作品で結構出てきたものだったと思う。
「前世からお慕いしていました。」というのはロマンティックな展開で、当時の人たちは本当に前世からの因縁を信じていたのだと思うと、なんだか自分とは別の人間な気がしてくる。
それは自分が前世という世界観に馴染みがないからだろうか。
『月の満ち欠け』を読んだ後には、生まれ変わりが世の中にあっても不思議じゃないのかもしれないとも思った。

前世なんてバカバカしいとはいうものの、現在の私がここにあるのは先祖がいたからで、これは否定できない。
現代の繋がりとは横のネットワークな繋がりをイメージしやすくて、遡るような縦の繋がりはどことなく身近ではなくなってきたのかもしれない。それに伴って、自分の祖先という過去の物語が自分を支えるという発想も希薄なのかもしれない。
自分自身の、前世なんてバカみたいだ、という発想はどこから来るのだろうか。

 

 もし誰かが自分のところにやってきて「前世から慕っていました。」と言ってきたら、嬉しいというよりは怖い気がする。
おかしいな、ロマンティックな展開のハズなのに…。

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